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読者の皆様へのメッセージ


本日をもちまして「みずいろブラッド」のブログの更新は終了とさせて頂きます。
ブログ開始から176日。
こんなマイナーなソフトの、マイナーなブログを読み続けて頂き、心から感謝します。

本当に…本当にありがとうございました!

終わる世界


廃墟となった都市にUGSFの艦隊が降下してくる。
赤く焼けただれた空に、ゆっくりと光の尾をひきながら。


どこかで鐘の音が鳴っている。
それは…焼けただれたブラッド学園の終業の合図。

そこは、ラブネリとドツキ合った教室。
そこは、学園祭でボロもうけした模擬店。
そこは、スキーで遭難した雪山。
そこは、スカイフィッシュを追いかけたジャングル。
そこは、アルバイトした海の家。

そこは、加藤くんを追いかけた学校の帰り道。
いつの日か見上げた、

それでもなお


「おかあさん…先生…」

眼にも止まらぬ速度でミサイルの発射レバーを操作しながら、みずいろは呟いた。

「最後まで…あきらめない!だって…だって、ここは、加藤くんの居た星だから!」

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おかあさんは最後まで奮戦していた。
反物質爆弾ですら効かないおかあさんに対し、UGSFは半径十キロに及ぶ球状の表面を空間転移させる。
断絶された空間の中で、再び封印されたおかあさんが日の目を見るのはそれから数千年の後の事となる。

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UIMS軍最後の兵力、第13主力宇宙艦隊旗艦「ブラッドレイン」が轟沈したのは、20発もの反物質ミサイルを受けて次元反転した空間に敵の戦艦を7隻巻き込んだ後である。
そしてそれは、全ての脱出船がワープした直後だった。

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地上部隊を恐怖に陥れたウシキング先生。
おかあさんと共に封印されたとも、反物質爆弾によって蒸発したとも言われているが現在に至るまで行方は杳として知れない…


爆発が船団を覆い隠す。

「ああっ」

絶望の声を上げるみずいろ。
だが、その爆発が消えてゆくと脱出船団の無傷な姿を現した。

「…え?」

再び黄色い閃光が迸る。
地表から伸びるその光が、流れるようにUGSFのミサイルを撫でる。
軌道上にいくつもの爆発がひろがっていった。

「あれは…デスビーム…」

その武器を使える人を、みずいろは一人だけ知っている。

「おかあさんっ!どうして!なんで脱出してないの?」

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焦土と化した町の中央では巨大化したおかあさんが空を見上げていた。
娘が戦っている、その空を。
次々とデスビームを放つと、空が光でみたされてゆく。

「みずいろちゃんがガンバッテるのに、私だけ逃げるなんて出来ないわ」

敵の降下部隊がおかあさんを取り囲む。
凶悪な砲台と分厚い装甲を持った戦車だった。
おかあさんはデスビームで応戦するが、その装甲に阻まれてしまう。

だが次の瞬間、全ての戦車が大爆発を起こした。

薩摩示現流。
口にくわえた日本刀に怪しく照り返されるウシキング先生の顔。

「がんばりましょうねっ!先生!」
「モー」

手を尽くしてもなお


UGSFの攻撃で地球の表面にはいくつもの光の輪ができている。
それは、強力な電磁波によって全ての機械生命体を抹殺するEMP兵器の衝撃波だった。

その輪から逃げ出すように、幾筋ものか細い光が立ち昇ってゆく。
民間人を満載した脱出船だ。

「脱出船を守れ!」
「ブラックボディの…クロハラ准将の死を無駄にするなっ!」

だが、命令したクルーは床に倒れたままぴくりとも動かない。
みずいろは自らガンナーシートに座り、脱出船を狙うミサイルを迎撃していく。

「墜とさせないっ!あの船には、おかあさん達が乗ってるんだ!!!」

レーダーの半分は沈黙。
残りの半分がスクリーンに映し出すのはまるで豪雨のようなミサイルの軌跡。
学生時代に射撃で抜群の成績を誇ったみずいろも、全てを撃ち落とす事は到底出来ない。

一発、また一発と通過してゆくミサイルは脱出船団の方向へと向かってゆく。

みずいろが叫ぶ。
その眼に黄色い閃光が広がってゆく。

ブラックボディ


「退却!退却!」

ブリッジにみずいろの鋭い声が響き渡ると、クルー達は一斉に持ち場に戻る。
艦の周囲で応戦していた駆逐艦ブルターニャが音もなく爆発する。

宇宙はUGSFの戦艦と、それらが発射するビームで真っ白に光輝いていた。
ブリッジの中まで眩い光で包まれる。

「脱出船団を、守るんだ!」

勝てるとは思わない。
だが、地球からの脱出船を一隻でも多く守る事が残された艦隊の使命だった。
UGSFの大艦隊に揉まれながらも、地球を背に懸命に戦う。

「僚艦アルバコア級轟沈!!」
「FAKER3部隊全滅しました!」
「前方より熱源接近!反物質ミサイルです!」

既に「ブラッドレイン」にそれを回避する余裕は無い。
みずいろは力の限り、叫ぶ。

「総員、脱出準備!」
「前方にワープアウト反応!」

まだ出るのかっ!
そう叫ぼうとしたみずいろの耳に信じがたい報告が届く。

「第12艦隊旗艦『ブラックボディ』!味方です!味方ですっ!!!」

喫水線より下を黒く塗りつぶした戦闘空母「ブラックボディ」は「ブラッドレイン」と同じように満身創痍の有様だった。最後のエネルギーをワープに使ったのだろう、その動きは惰性で動いているようにしか見えない。

通信。

「よお」

それは懐かしい声。

「あの時は助けてもらっちまったからな…借りを返すぜ」

それは、クロハラ准将だった。
乱暴者で、デリカシーが無く、女の子の気持ちなんか全然わかんなくて、すぐ大きい声を出すけれど、いつも最後の最後には優しかったクロハラ君だった。
みずいろは何かを言おうとしたが、声にならない。
ブラックボディの側面にミサイルが着弾する。
閃光がレーダーを包む。
爆風がブラッドレインの船体を激しく揺らした。床に叩き付けられるクルー。

「みんなを、たの」

それが、ブラックボディからの最後の通信だった。

過去


第一次UGSF侵攻から5年。
だが、「侵攻」という呼び方は正しくない。

この星はもともと彼等「人間」の物だったからだ。
私たち機械生命体「UIMS」が地球を占領したあと、生き残った僅かな人類は宇宙へと逃げ延びた。
私たちが人類の遺跡を利用して生活を始めて既に数世紀。
文明らしきものが私たちにも芽生え、そして私たちの新しい時代がこの地上に生まれようとしていたその矢先に、彼等は戻ってきた。

何百年もかけて。
我々の技術を奪い模倣し、その牙を研ぎながら。
生まれた地を奪還する為に。

もちろん、備えてはいた。
訓練校だったブラッド学園の学生は全て徴兵され、各地で司令官として戦っている。だが、所詮は焼け石に水。劣勢を覆す事にはならない。

加藤くんはあのときの爆撃で負傷した傷が悪化して、帰らぬ人となった。


そして私は今もまだ、戦っている。

ワープアウト

艦橋全部の大画面スクリーンがホワイトアウトから徐々に回復してゆく。ノイズのような数万もの観測セルがスクリーンを真っ青に染め上げてゆく。艦橋に緊張が走る。
あわただしく拡大確認を繰り返すセルの映像のほとんどはUGSFの艦隊の破壊された船体だった。異様な形にねじれたクロノス級とおぼしき船体がスクリーンを横切る。そして中心部に近づいていくにつれ、敵艦隊の残骸は少なくなっていった。あまりの高熱に蒸発してしまったのだ。

ホワイトアウトから回復し、全ての観測セルからの報告が表示される。
敵艦隊は数十隻を残して全て消失。残された敵艦も戦闘が可能な船は無かった。

驚きと、安堵のさざめきが船につつむ。

「勝った…」
「さすがは艦長…いや、『栄光の女神』!!」

驚きが歓声へと変わり、船全体に響く。
みずいろは苦笑いをしながら、艦長の席に座る。
もう、何日も座っていなかったかのようにその椅子は収まりが悪かった。

「また、生き延びたか」

レーダー担当が陽気な声で艦長に声をかける。

「レーダー、回復しました!…あれ?」
「どうした?」
「いえ……爆発の影響でしょうか、観測平面に揺らぎが見えるのですが…」

みずいろはレーダーを見た。
その揺らぎが徐々に強くなってゆく。

「まさか…そんな、バカな」

みずいろはその眼を疑った。
レーダーで観測可能な範囲、まるで宇宙全体に次元振動が起こっているようだった。

「振動波感知!!!これは、ワープアウトです!」

レーダーが一気に赤い光で飽和する。
血をぶちまけたようなそのスクリーンは、もはやレーダーの役割を果たしていなかった。全ての方向、全ての距離に敵艦が出現しているからだ。

呆然と立ちつくすクルー達。
その視線の先には、ワープアウトしてくる13個の巨大な光球。
絞り出すように、みずいろが呟く。

「……惑星破壊砲が……13機もあるのか…」

イチカバチカ


「第9艦隊デルタノーズ級、旗艦オーディン轟沈します!」
「ドルドヴァ12隻が航行不能、8隻が当艦隊に合流します!」
「第10艦隊からの応答途絶!」

爆音。

「右舷大破っ!第2居住区の隔壁を閉鎖します!」

衝撃に悲鳴を上げる艦橋の中で矢継ぎ早に被害報告が上がってくる。
みずいろ率いる第13主力艦隊は、その半数を失いながら敵艦隊の中心部へと突撃していた。

「見えたっ!」

敵の惑星破壊砲。
全長が数千キロにも及ぼうという巨大な円筒状の兵器がゆっくりと回頭している。その砲口が第13艦隊を捉えようとしていた。
みずいろが叫ぶ。

「面舵いっぱい!敵と地球の軸線上に艦隊を移動せよ!」
「しかしそれでは、地球に当たります!」
「構うなっ!奴等に地球を撃つ事は出来ないっ!」

卑怯な作戦だと判っていた。
だが、それしか方法は無かった。
惑星破壊砲が第13艦隊を射線上に捉えた時には、その先に地球が位置した。
戻るべき星を撃ち抜く事は出来ないUGSFを尻目に、みずいろは艦隊に残された火力を全て反撃に費やす。

「目標!敵、惑星破壊砲!砲の内部を狙え!」

その意図を察知したUGSF軍は、全力で惑星破壊砲を回頭・後退させようとした。だがその巨体故に攻撃をかわす事が出来ない。「ブラッドレイン」を初めとする残存艦艇の砲撃が惑星破壊砲の砲口から内部に入り込む。
次の瞬間、反物質爆弾の閃光が惑星破壊砲の表面を引き裂きながら漏れだしてくる。その光は宇宙を真っ白に染めてゆく。

その爆発の渦に敵艦隊が飲み込まれていった。

「やったか!?」

真実


UIMS軍 第13主力宇宙艦隊 旗艦「ブラッドレイン」

転送される地上のニュースを見た艦長は、苦虫を噛みしめたように顔をしかめる。

「撤退中」と伝えられている木星防衛艦隊。
「通信途絶」となっているエウロパ基地。
だが、事実は違う。

一撃。

敵の最初の一撃で塵になってしまったのだ。
120隻からなる大艦隊はおろか、エウロパ基地は3000キロメートル以上ある衛星エウロパもろとも粉々にされていた。
迎撃に出撃した第8から13までの宇宙艦隊はUIMS軍の持つほぼ全ての戦力になる。その総数4321隻。それに対し、火星付近まで侵攻した敵軍の総数は確認されているだけで104万2938隻。

絶望的状況だった。
5年前に起こったあの戦闘の相手は、先遣偵察部隊に過ぎなかった。
奴等が、忌まわしい地球人共が、自らの星を奪い返しに来たのだ。

先の戦いでUGSFを撃退し「栄光の女神」と呼ばれ、艦隊司令にまで祭り上げられた。その栄光とやらもここまでらしい。

UIMS軍宇宙艦隊総司令みずいろの、最後の戦いが始まろうとしていた。

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