ブラックボディ


「退却!退却!」

ブリッジにみずいろの鋭い声が響き渡ると、クルー達は一斉に持ち場に戻る。
艦の周囲で応戦していた駆逐艦ブルターニャが音もなく爆発する。

宇宙はUGSFの戦艦と、それらが発射するビームで真っ白に光輝いていた。
ブリッジの中まで眩い光で包まれる。

「脱出船団を、守るんだ!」

勝てるとは思わない。
だが、地球からの脱出船を一隻でも多く守る事が残された艦隊の使命だった。
UGSFの大艦隊に揉まれながらも、地球を背に懸命に戦う。

「僚艦アルバコア級轟沈!!」
「FAKER3部隊全滅しました!」
「前方より熱源接近!反物質ミサイルです!」

既に「ブラッドレイン」にそれを回避する余裕は無い。
みずいろは力の限り、叫ぶ。

「総員、脱出準備!」
「前方にワープアウト反応!」

まだ出るのかっ!
そう叫ぼうとしたみずいろの耳に信じがたい報告が届く。

「第12艦隊旗艦『ブラックボディ』!味方です!味方ですっ!!!」

喫水線より下を黒く塗りつぶした戦闘空母「ブラックボディ」は「ブラッドレイン」と同じように満身創痍の有様だった。最後のエネルギーをワープに使ったのだろう、その動きは惰性で動いているようにしか見えない。

通信。

「よお」

それは懐かしい声。

「あの時は助けてもらっちまったからな…借りを返すぜ」

それは、クロハラ准将だった。
乱暴者で、デリカシーが無く、女の子の気持ちなんか全然わかんなくて、すぐ大きい声を出すけれど、いつも最後の最後には優しかったクロハラ君だった。
みずいろは何かを言おうとしたが、声にならない。
ブラックボディの側面にミサイルが着弾する。
閃光がレーダーを包む。
爆風がブラッドレインの船体を激しく揺らした。床に叩き付けられるクルー。

「みんなを、たの」

それが、ブラックボディからの最後の通信だった。